短下肢装具硬性(シューホンブレイスなど)は、靴を履くことで屋内外問わず使用できます。しかし、装具が足を覆う構造上、履ける靴のデザインやサイズに限りがあり、装具に合わせて大きめの靴を選ぶと、健側(装具を装着していない側)の足に合わず、負担が増えてしまうこともあります。
装具を作成するとき、靴についてのご質問をいただくことが多いです。そこで今回は、装具と併用しやすい靴のポイントと、実際によくご提案している靴をご紹介します。
ターゲット
- 退院時に短下肢装具用の靴を案内する必要がある方
- 短下肢装具用の靴を探している方
装具が使いやすい靴のポイント
まず、装具が使いやすい靴のポイントは以下の3つです。
- 片足ずつ異なるサイズを購入できる靴
- 装具側の靴の幅が広い設計の靴
- 靴の履き口が広い靴
1. 片足ずつ異なるサイズを購入できる靴
装具を装着する側の足は、装具の分だけスペースが必要になるため、健側よりも大きめの靴が望ましいです。もちろん、装具と靴のデザインによっては普段と同じサイズで履ける場合もありますが、その場合、上肢(手)の高い能力や広いスペースが必要になることがあります。
外出時の脱ぎ履きや装着時間を考慮すると、左右で異なるサイズの靴を履くことをおすすめします。ただし、同じ靴をサイズ違いで2足購入するのはコストがかかりすぎます。そこで、片足ずつ異なるサイズで購入できる靴を選ぶと経済的です。
定番シリーズ:徳武産業の「あゆみ」シリーズ
- ほとんどの商品がサイズ違いで片足ずつ購入可能
- 多くの店舗やネットショップで取り扱いあり
- 病院内で購入できる場合もあり、退院時の一足として人気
最近では、アシックスが直営店で片足ずつの販売を開始するというニュースもありました。今後、さまざまなメーカーで片足ずつ靴を購入できるようになるかもしれません。
2. 装具側の靴の幅が広い設計の靴
装具側の靴のサイズを大きくすることに加え、同じデザインで幅広タイプを選べる靴もおすすめです。多くの短下肢装具は、下垂足や尖足に対応し、歩行時につま先と地面のクリアランスを確保する目的があります。
靴のサイズを大きくしすぎると、つま先に余分なスペースができ、地面に擦りやすくなる可能性があります。装具に対して足長が大きすぎる靴は、歩行時のトラブルの原因となります。一方、サイズを1サイズ上げただけでは装具が入らず、左右で2~3サイズ違う靴を履くこともあります。
このような場合、サイズを上げるのではなく、**足幅を広くする(3Eから7Eなど)**ことで、左右のサイズ差を1サイズ程度に抑えることができます。床面とのクリアランスの確保と靴の脱ぎ履きの容易さを同時に実現できるため、おすすめです。
おすすめポイント
- 3Eモデルと7Eモデルを選べる
- 片足ずつサイズを選択できる
3. 靴の履き口が広い靴
短下肢装具を装着した状態では、足首が固定されていることが多く、靴を履くときには相応の技術と能力が求められます。自分で脱ぎ履きすることを考えると、可能な限り履き口が広く、装具を差し込みやすい靴が理想的です。
よく提案する靴
退院時によくご提案する商品を2つご紹介します。これらの靴は、前述の3つのポイントをすべて満たしており、装具が使いやすく、最初の1足として最適です。
1. Vステップ06(ムーンスター)
短下肢装具と靴といえばこの靴というほどの定番商品です。
- 特徴
- 片足ずつサイズが選べる
- 3Eから7Eまで幅広タイプが選べる
- 履き口が広く、装具を装着したままでも履きやすい
- 中敷きが外せるため、さらに履きやすさ向上
- かかとのループや広げやすい履き口の構造で、介助者も履かせやすい
最初の1足としては鉄板の商品です。
2. Relifeサポート02(あゆみ)
この商品も、装具を装着した状態で履きやすい靴の条件をすべて満たしています。
- 特徴
- 片足ずつサイズが選べる
- 3Eから7Eまで幅広タイプが選べる
- 履き口が広く、装具を装着したままでも履きやすい
- 中敷きが外せる
- 3本のベルトで靴の締め加減を調整可能
- むくみがある方にもおすすめ
Vステップ06との違いは、ベルトの本数が多く、細かなフィット感の調整ができる点です。
靴べらについて。補助的なアイテム:Vela ~ベラ
靴べらがあれば靴に足を入れやすいのに、靴べらの使用が難しいという方におすすめのアイテムがあります。
Vela ~ベラ~
- 靴に靴べらを取り付けて履き、後から靴べらを外す仕組み
- 装具装着で靴が履きにくい方に有効
商品の紹介ページは下記のリンクから
番外編:中敷きを外す工夫
装具を装着した状態で靴を履く際、中敷きを外すと靴の中にスペースが生まれ、履きやすくなります。装具と靴の種類によっては、中敷きを外すだけで装具が入ることもあるので、ぜひ試してみてください。
まとめ
今回は、短下肢装具硬性が使いやすい靴のポイントと、定番の靴をご紹介しました。まだ装具専用の靴は市場に多くありませんが、片足ずつ靴を販売するメーカーも増えてきており、選択肢が広がっていると感じます。
今後も良い情報があれば、追記や別の記事でお伝えしたいと思います。装具と靴の選び方でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
よろしくお願いします。
シューホンブレイスについてはこちらの記事も参考に。
継手付きの短下肢装具硬性。タマラックやジレットの解説記事はこちら。
オルトップAFOシリーズの記事はこちらの参考に
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