障害者手帳と義肢装具。補装具費支給制度の申請方法と流れ【身体障害者総合支援法】

補装具・義肢装具関係

はじめに

今回は、身体障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度の申請方法について解説します。実際の現場では「障害者手帳」を利用して装具や義足を製作する際に、この制度が利用されます。申請から支給決定までのプロセスは、自治体ごとに多少異なることが多いですが、基本的な流れは全国的に共通しています。どの地域にお住まいの方でも、また担当者の方にも役立つ内容となっていますので、ぜひご一読ください。

読者ターゲット

  • 補装具費支給制度の申請を考えている方
  • 義足や装具の製作を検討している方
  • 身体障害者総合支援法に基づく制度を案内する必要がある方

補装具費支給制度の概要

補装具費支給制度は、障害者手帳を持つ方が義足や装具を製作する際に利用できる支援制度です。申請から支給決定までのプロセスは自治体ごとに多少異なりますが、基本的な流れは全国的に共通しています。申請を行い、必要な判定を経て支給券が発行されるという流れです。

補装具費支給制度の申請方法

ステップ1: 申請手続き

まず、居住地域の役所の障害福祉課で申請を行います。申請が受理されると、自治体の更生相談所で障害状況や装具の必要性が判定されます。

ステップ2: 判定の流れ

判定方法は自治体ごとに異なります。巡回相談で直接本人と対面して判定を行う地域もあれば、医師の意見書を基に文章判定を行う地域もあります。また、巡回相談と文章判定を併用する地域もあります。判定方法については、事前に自治体に確認することが必要です。

例として大阪府における補装具費支給の判定、適合判定についてのページです。
大阪府補装具費支給制度

ステップ3: 支給券の発行

判定が完了した後、事業者が見積もりを提出し、支給が認められると支給券が発行されます。支給券には装具の代金や自己負担額が記載され、事業者への支払いに使用されます。また、支給券とともに委任状が発行されます。これは、事業者が利用者に代わって補装具費を請求するために必要な書類です。

ステップ4: 製作と適合判定

装具の製作が完了した後、完成した装具が利用者に適しているかを確認するために、適合判定を受けます。この適合判定を受けることで、装具の完成が正式に認められます。適合判定の方法は自治体によって異なり、写真や文章での判定、巡回相談による対面判定など様々です。適合判定を受けない場合、装具の修理や作り替え時に制度を利用できない可能性があるため、注意が必要です。

よくある質問

巡回相談とは何か?

巡回相談は、補装具費支給制度の一環として、県の更生相談所が指定された場所と日時で実施する身体障害者向けの相談会です。身体障害者が必要とする補装具の適合判定や、新たな補装具の処方などを行う場です。

巡回相談の日時や場所は、自治体が事前に公表しています。日時と場所が指定されているため、事前に自治体へ確認する必要があります。最近では、オンラインで判定を行う自治体もあると言われています。(私の活動地域ではまだ導入されていません。)

文章判定とは?

巡回相談ではなく、病院を受診し医者の作成した「医学的意見書」と「処方箋」によって、必要とする補装具の判定や、新たな補装具の処方を行うものです。様式が決まっていますので、文章判定を希望する場合は申請時に必ず書類を受け取ってください。

補装具費支給制度を利用すれば健康保険で装具を作らなくてもよいのか?

制度には優先順位があります。基本的に健康保険制度が優先されます。制度の優先順位については、以下の記事で解説しています。


簡単解説。義肢装具にまつわるお金の話 補装具費支給制度解説編

個人的な見解

活動している地域では、治療用装具を作成してから更生用装具を作成するケースが多いです。更生用装具を作成するためには健康保険の利用が先に必要だと感じています。

装具の形式は自由に変更できるか?例えば、両側支柱短下肢装具からプラスチック製の短下肢装具に変更は可能か?

形式変更は、更生相談所の判定によって決まります。変更できる場合もあれば、認められない場合もあります。形式を変更するには、適切な理由が必要です。

個人的な見解

補装具費支給制度を利用する場合、基本的に治療用装具と同じ形式のものが作成されることが多いと感じています。例えば、治療用装具で両側支柱の短下肢装具を作成した場合は更生用装具でも同様の形式(両側支柱)で判定が下りる、といったものです。

長下肢装具を作成後にカットダウンして短下肢装具として使用している場合、短下肢装具の判定はおりるのか?

判定が下りる場合もあれば、そうでない場合もあります。最終的な判断は更生相談所の判定によります。カットダウンして短下肢装具として使用している場合でも、保険の記録上では長下肢装具となっているため、記録だけで判断されると短下肢装具の判定が下りないことも考えられます。

個人的な見解

治療用装具で短下肢装具を作成してから申請するように案内されることが多いです。ただし、現状の使用状況を考慮して、短下肢装具の判定が下りることもあります。

治療用装具や訓練用義足と同じ構成なら必ず判定が下りるのか?

治療用装具や訓練用義足と同じものでも、必ずしも判定が下りるとは限りません。最終的な判断は更生相談所の判定によるため、必ず許可が得られる保証はありません。

装具の作り替えや修理にも複雑な手続きが必要か?

同じ形式の装具の作り替えや修理であれば、申請と見積もりだけで支給券が発行される自治体が多いです。ただし、義足のソケット交換や足部の交換など、大規模な修理の場合は判定が必要な自治体もあります。ライナー交換のみで判定が必要と言われたことは、これまでの経験ではありません。

個人的な見解

装具の同型交付については、申請と見積もりだけで判定が不要になるケースが多いです。しかし、支給券発行に判定が不要であっても、適合判定が必要になる場合があります。判定書の「判定必要か不要か」の欄は必ず確認するよう心がけています。自治体によって対応が異なるため、事前確認が重要です。

補装具費支給制度は完全に無償か?

無償ではなく、一定の自己負担金があります。所得に応じた負担上限額が設定されています。原則として1割負担ですが、世帯の所得に応じて次のような負担上限月額が定められています。

所得区分負担上限月額
生活保護世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯37,200円

ただし、障害者またはその配偶者の所得割が46万円以上の場合、補装具費の支給対象外となります。詳細は厚生労働省の補装具費支給制度のガイドラインを参照してください。

まとめ

補装具費支給制度の申請方法や手続きの流れについて解説しました。申請から判定、製作、適合判定までのプロセスを理解することで、手続きをスムーズに進めるための準備が整います。判定方法や手続きの違いは自治体ごとに異なるため、事前に確認することが重要です。複雑な手続きに戸惑うことがあるかもしれませんが、基本的な流れを把握することで、安心して制度を利用できると思います。

今回の記事には個人的な見解が多く含まれています。詳細や正式な制度については、以下のリンクから補装具費のガイドブックを参照してください。

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