はじめに
今回は反張膝に対する装具での対応方法についてまとめました。仕事中に特に短下肢装具使用時の反張膝への対応策についてよく質問を受けるため、今回は短下肢装具に焦点を当てた内容が中心となっています。よく質問される内容や、普段の業務で私が行っている対応に加え、「脳卒中の下肢装具」で紹介されている内容も取り入れて説明します。
読者ターゲット
- 装具の選択に迷っている方
- 装具の調整方法を調べている方
- リハビリや装具の調整に携わる方
膝装具
膝装具はその名の通り、膝に直接作用します。尖足による二次的な反張膝ではなく、膝関節疾患など一次的な要因での反張膝に対応する場合は、膝装具を提案します。個人的によく提案するのは「CBブレース(反張膝用)」です。軽量で高い剛性を持ち、矯正力もカフベルトの締め具合で調整できます。ちなみにCBブレースは反張膝用だけでなく膝OA(変形性膝関節症)用もあります。
参考URL:https://www.cb-sakima.jp/medical.php
長下肢装具使用時の反張膝への対策
長下肢装具を使用している場合、反張膝が見られるときには以下のような対策を取ることがあります。
膝当てを反張膝用に変更
膝当てによって膝を後方から押し込み、反張膝を抑制します。リングロックを使用している際に反張膝が出現する場合に有効です。
ダイヤルロックで角度を調整
ダイヤルロックで膝関節の角度を制限し、反張膝の発生を抑えます。この方法は「脳卒中の下肢装具 第三版」(リンクは第四版)で紹介されており、非常に参考になりました。
短下肢装具での反張膝への対応
短下肢装具では、背屈角度や底屈の制限・制動力を調整することで反張膝に対応します。立脚期のどのタイミングで反張膝が見られるかによって、対応方法は異なりますが、ここでは基本的な考え方のみを記述します。
装具の初期背屈角度を増やす
足に背屈可動域がある場合、装具の初期背屈角度を増やすことで反張膝を抑制します。ゲイトソリューションシリーズやWクレンザックを使用した装具では、比較的簡単に初期背屈角度を変更できます。タマラックやオクラホマといった足継手付きプラスチック短下肢装具では、後方のパンバーを調整して角度を変更することが可能です。
装具外に捕高(楔)を使用して下腿を前傾させる
背屈可動域がない場合は、外部に捕高を装着し下腿を前傾させて反張膝に対応します。ただし、この方法では装具側が健側よりも高くなってしまうため、脚長差を改善するために健側にも捕高が必要です。
底屈の制動力を強める
底屈の制動力を調整できる装具では、制動力を強めて反張膝を抑制します。ゲイトソリューションシリーズなら継手の油圧レベルを上げることで調整可能です。制動力を強めても反張膝が解決しない場合は、「底屈制動」ではなく「底屈制限」の装具に切り替えることをお勧めします。
例:
- ゲイトソリューション→タマラック(底屈制限機能付き)
- オルトップAFO LH→シューホンブレイス
Wクレンザックとゲイトソリューションを併用している場合は、Wクレンザック側のロッドを使用して、装具を変更せずに底屈を制動から制限に切り替えることが可能です。
トリミングがフレキシブルなシューホンブレイスの場合
トリミングが柔軟に調整できるシューホンブレイスでは、装具自体を作り変える必要がある場合もあります。同じシューホンブレイスでも、トリミングをよりリジットなものに変更することで反張膝に対応可能です。ただし、作り変えには費用がかかるため、制度を利用して費用をカバーする方法についても注意が必要です。制度によって、装具製作のタイミングや一時的な負担額が異なることに留意してください。
補装具費支給制度についてはこちらの記事も参考にしてください。
下腿の前傾角度と膝の角度の関係
短下肢装具において、下腿の前傾角度(SVA)と背屈角度は非常に重要です。装具の角度によって膝の動きが大きく変わるため、以下のポイントを押さえておくことが必要です。
- 底屈位の装具:膝の過伸展(反張膝)を引き起こしやすい。
- 背屈位の装具:膝の過屈曲を引き起こしやすい。
- 前傾角度が少ないと過伸展方向に、角度が多いと過屈曲方向に影響が出る。
この考えを基本に装具を調整しています。
まとめ
今回は反張膝と下肢装具についてまとめました。膝に直接作用する場合は膝装具、短下肢装具使用時に反張膝が見られた場合は、背屈角度、底屈の制動力、下腿の前傾角度を意識して調整しています。日常業務で役立てている方法を紹介しましたので、皆様の参考になれば幸いです。
それではまた。