はじめに
今回もPO(義肢装具士)を目指す学生を対象にした記事です。過去に国試対策用として作成したブログ記事を再編集しました。大腿義足の基本的な知識をまとめています。
この記事では大腿義足の基本的な構造と、特に重要なソケット部分に焦点を当て、四辺形ソケットとIRC(坐骨収納式)ソケットの違いや特徴について解説します。
下腿義足のソケットについては別の記事にまとめていますので、そちらもぜひ参考にしてください。
注意点
本記事は、義肢装具士(PO)国家試験の過去問題を基に、自分なりに解釈してまとめたメモです。この記事の内容は、あくまで国試対策としての参考資料であり、臨床現場での適用や判断には直接的に役立つものではないのでご注意ください。
そもそも大腿義足とは?
大腿義足の基本構造
大腿義足は、大腿部を切断された方が使用する義足です。下腿義足との主な違いは、「膝継手」が含まれていることです。膝継手は失われた膝関節の機能を補う役割を果たし、股関節の伸展筋力がその制御において重要となります。
大腿義足の構成要素
大腿義足は以下の5つの要素で構成されています:
- ソケット
- 懸垂装置
- 支持部
- 膝継手
- 足部
ソケットの種類
大腿義足のソケットには、以下のような種類があります:
- 四辺形ソケット
- 坐骨収納型ソケット(IRC)
- M.A.Sソケット
ソケットは、使用者の体重を支えるために、前壁、内壁、外壁、後壁の4つの壁が機能的にデザインされています。これにより、軟部組織を適切に圧迫し、安定した歩行が可能になります。
四辺形ソケット
四辺形ソケットの特徴
四辺形ソケットは、軟部組織を圧迫することで安定感を得るために設計されています。坐骨結節を後壁で支持し、前壁のスカルパ三角部分で適度な圧力を加えることで、断端がソケット内に落ち込むのを防ぎます。この設計により、前後径(AP径)が狭く、内外径(ML径)が広いのが特徴です。
四辺形ソケット各壁の機能
前壁
前壁は、歩行時の運動伝達を目的にしています。前面に圧力を加えることで、坐骨結節を適切な位置に保持します。
- 接触する筋群: 長内転筋、縫工筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋
- 形状: 大腿動脈、大腿静脈、大腿神経を圧迫しないようにし、スカルパ三角には適度な圧を加えます。
内壁
内壁は、長内転筋やハムストリングスにゆとりを与え、内転筋ロールを防ぎます。また、坐骨が内側に移動しないようにするカウンターとしての役割も持ちます。
- 接触する筋群: 長内転筋、薄筋、大内転筋、ハムストリングス
後壁
後壁は、坐骨結節や大臀筋に体重支持機能を与えます。
- 接触する筋群: 大臀筋、ハムストリングス
外壁
外壁は、大腿骨の外転を防ぎ、骨盤の水平を保つ役割があります。短断端では、外側の安定性を向上させるために、大転子を包み込むように設計されます。
- 接触する筋群: 大腿筋膜張筋、外側広筋、大臀筋
坐骨収納式ソケット(IRC)
IRCソケットの特徴
IRCソケットは、四辺形ソケットの問題点を解決するために開発されました。坐骨をソケット内に収納し、大腿骨と骨盤を固定することで、大腿骨を内転位に保つことが特徴です。これにより、歩行時の安定性が向上します。
四辺形ソケットの問題点
四辺形ソケットでは、坐骨結節が水平に支持されるのみで、大腿骨が外転しやすいという問題がありました。この外転により、断端内側近位や外側遠位に圧がかかり、不快感や痛みが生じることがあります。
IRCソケットの解決策
IRCソケットでは、以下の方法でこれらの問題を解決しています:
- 坐骨の固定: 坐骨と坐骨枝をソケット内にしっかりと収納し、大腿骨を内転位に保つ。
- 骨MLの反映: ソケットに大転子直下の外側の距離(骨ML)を忠実に再現し、骨盤と大腿骨を固定します。
IRCソケット各壁の機能
前壁
前壁は、坐骨を適切に保持し、座位の快適性を提供します。また、恥骨や上前腸骨棘への負担を軽減します。
- 接触する筋群: 長内転筋、恥骨筋、縫工筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋
内壁
内壁は、坐骨と坐骨枝を収納し、内転筋ロールを防ぎます。また、長内転筋腱の負担を軽減し、ハムストリングスを適切に収納します。
外壁
外壁は、大腿骨を内転位に保持し、側方安定性を高めます。また、骨ロックを実現するための適切な内転角と腸骨大腿骨角を再現します。
臨床上の問題点
IRCソケットにおいても、骨端部の痛みや軟部組織のたるみなどの問題が発生することがあります。これらはソケットの形状や設計が不適切な場合に生じるため、慎重なフィッティングが必要です。
まとめ
この記事では、大腿義足の基本的な構成要素と主要なソケットの種類について説明しました。四辺形ソケットとIRCソケットの特徴を理解し、適切なソケットを選ぶことで、日常生活の質を大きく向上させることが可能です。再度、過去に作成した記事をベースに再編集していますので、最新の情報も参考にしながら理解を深めてください。
こちらにも義足の用語をまとめています。