はじめに
この記事では、シューホンブレイスをトリミングラインによって4つに分類し、それぞれについて説明します。シューホンブレイスは、トリミングによってプラスチックの撓みを調整し、病態に応じて背屈および底屈方向の撓み量を調整します。この記事では撓みの程度を4種類に分けて説明しますので、装具選定やデザインの際に役立ててください。
トリミングって何?
プラスチックのカットラインのことです。シューホンブレイスは、プラスチックが内外果を覆う量で性能が変化します。目的に合わせたトリミングラインの選択が、シューホンブレイスの肝であり、一番難しいところでもあります。
トリミングによる撓みの分類
1:リジット
- 特徴:体重をかけても撓まない程度の硬さ。
- 適応:底屈筋力が0~著名に低下している場合、背屈筋力が0~著名に低下している場合、下腿三頭筋の痙縮が著名な場合。
2 セミリジット
- 特徴:手で撓ませることは難しいが、体重をかけると撓む程度の硬さ。
- 適応:底屈筋力が著名~中等度に低下している場合、背屈筋力が著名~中等度に低下している場合、下腿三頭筋の痙縮が中等度の場合。
3 セミフレキシブル
- 特徴:手でどうにか撓ませることができる硬さ。
- 適応:底屈筋力が中等度~軽度に低下している場合、背屈筋力が中等度~軽度に低下している場合、下腿三頭筋の痙縮が軽度の場合。
4 フレキシブル
- 特徴:手で容易に撓む程度の柔軟さ。
- 適応:底屈筋力が軽度に低下しているか、低下がない場合、背屈筋力が軽度に低下しているか、低下がない場合、下腿三頭筋の痙縮がない場合。
注意点
- 撓みの種類を量的に表現することは難しいため、この4段階の分類は必ずしも均等な配分ではありません。
- 定量化された撓みの分類が必要です。
- 撓みは背屈方向で表現されることが多く、シューホンブレイスは背屈方向の撓みが底屈方向よりも柔軟であることが多いです。
撓みの種類と対応病態について
各トリミングラインの適応表
撓みの種類 | 背屈筋力 | 底屈筋力 | 下腿三頭筋痙縮 |
---|---|---|---|
リジット | 0~著名低下 | 0~著名低下 | 著名 |
セミリジット | 著名~中等度低下 | 著名~中等度低下 | 中等度 |
セミフレキシブル | 中等度~軽度低下 | 中等度~軽度低下 | 軽度 |
フレキシブル | 軽度低下~低下なし | 軽度低下~低下なし | なし |
トリミングライン選択の上で下腿三頭筋の痙縮は重要な要素です。
個人的なトリミングライン選択の基準としては、
尖足であれば、リジット、下垂足であればフレキシブル。といったイメージで提案しています。
トリミングラインと膝関節の安定性について
トリミングラインの選択において、膝関節の安定性は重要なポイントです。リジットなシューホンブレイスの場合、膝関節は膝折れ傾向を見せます(立脚初期に底屈が制限され、下腿が前傾する速度をコントロールできないため)。反対にフレキシブルなシューホンブレイスは反張膝傾向に誘導します。
そのため、リジットなシューホンブレイスで膝折れが見られる場合、トリミングをフレキシブルに加工して撓みの量を増やすことがあります。しかし、トリミングラインを過度に柔軟にすると、足関節を制御する力が低下し、その結果、足関節が底屈し、立脚期において反張膝の原因となります(制動力が不足すると反張膝の原因となる)。
シューホンに限らず、足継手の制限・制動と膝関節の関係は、下肢装具選択における重要な要素です。歩行パターンに合わせたトリミングライン、足継手の選択が必要です。
制動・制限の解説については、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
シューホンブレイスの撓みはトリミングラインによって異なり、それぞれの機能が変わります。制限をかけて痙縮に負けないように撓まないようにするのか、制動をかけて円滑な立脚初期を目指すのか、目的に応じて選択することが重要です。
参考文献:脳卒中下肢装具(第3版)
足継手付きシューホンに関する記事はこちら。
油圧による制動といえばGS。ゲイトソリューションシリーズについての記事はこちら。