簡単解説!個人的によく製作する長下肢装具の仕様まとめ。

下肢装具

はじめに

長下肢装具は、支柱、大腿カフ、膝継手、膝あて、下腿カフ、足継手、足部、あぶみで構成されています。特に膝継手、足継手、足部の仕様は装具の使用目的に直結する重要な要素です。また、靴底の加工も装具の機能に大きな影響を与えます。例えば、フレアヒールやサッチヒールなどがあります。

長下肢装具の製作に必要な情報はネット上でほとんど見つかりません。そこで、私が仕事でよく製作する長下肢装具の仕様についてまとめました。このガイドでは、基本仕様と追加仕様に分けて、長下肢装具を設計する際に参考になる情報をまとめています。

ターゲット

このガイドは、以下の方々を対象としています。

  • 長下肢装具の仕様を決定する方
  • 長下肢装具について学習中の方

構成要素

長下肢装具の主な構成要素

長下肢装具は、支柱、大腿カフ、膝継手、膝あて、下腿カフ、足継手、足部、あぶみで構成されています。装具の設計には、まず基本的な構成要素である膝継手、足継手、足部、あぶみの仕様を決定し、その後、膝あてや各種ストラップなどの追加仕様を選択します。

基本仕様

膝継手

膝関節の屈曲伸展をコントロールする部品です。よく使用する膝継手をご紹介します。

リングロック

リングロックタイプ。ロック機構がシンプル

最もシンプルな機構です。ロック機構を上下させると、膝関節の固定・遊動の切り替えが可能です。

ダイヤルロック

ダイヤルロック。ロックをしたままネジを外して調整する。

膝関節の屈曲拘縮がある場合に使用し、屈曲角度を設定できます。膝を屈曲させたままロックが可能です。

SPEX

SPEX。膝関節を軽度屈曲の再現と伸展補助機能付き。

膝関節のロック機能に加え、膝関節の軽度屈曲と伸展補助機能を持ちます。伸展補助はバネによって行います。バネをロッドに変えれば、固定式としても使用可能です。

SPEXは指定の角度”まで”膝関節を曲げることが可能な膝継手です。伸展補助機能と軽度の屈伸可動性により、立脚初期の軽度の膝屈曲を再現できる継手となっています。

足継手

足関節の底屈背屈をコントロールする部品です。よく使用する足継手を紹介します。

ダブルクレンザック

Wクレンザック。足関節低背屈を固定、制限、制動、遊動に切り替えることができる。

足関節の底屈、背屈の制限・制動が可能です。制限・制動の切り替えはロッドとバネを入れ替えることで行います。対象方向にロッドを差し込むと制限。バネを差し込むと制動をかけることができます。ロッド・バネを使用しない方向は遊動に切り替えることができます。

GS+ダブルクレンザック

GS+Wクレンザック。Wクレンザックの機能にプラスして油圧による足関節制動が可能。

ゲイトソリューションによる底屈制動機能を追加したものです。バネによる制動よりも、油圧により調整可能な強力な制動力を発揮させることができます。Wクレンザック側をロッドで固定することで、足関節に制限をかけることも可能。Wクレンザック単独仕様よりも、多くの状況に対応できることが特徴です。ただし、その分価格も上昇します。

足部

文字通り足が入る部分です。よく製作する仕様を紹介します。

靴型

屋外での使用に向いています。短靴かチャッカ靴で製作することが多いです。

短靴かチャッカ靴かは、アッパーの高さ(足を覆う量)で決まります。

短靴
短靴。一般的な運動靴と同じようなアッパーの高さ。

一般的な靴。特に理由がなければ選択するケースが多いです。

チャッカ靴
チャッカ靴。アッパーが短靴より高い。

短靴よりもアッパーが高く、足が多く覆われています。インソールで1cm以上補高をする場合、短靴ではなくチャッカ靴で製作することが多いです。また、内反尖足がある場合には後述する、足抑えベルトやT・Yストラップと併用するケースが多いです。

足部覆い(トゥーオープン型)

足部覆い型。屋内利用用。装着がしやすい。

靴型との一番の違いはつま先の形状です。足部覆い型はつま先部分が開いています。そのため装着が靴に比べると容易です。つま先が開いているので屋外での使用には向いていません。アッパーの高さがチャッカ靴と同形状です。インソールによる補高にも向いています。

あぶみ

あぶみ。足長、用途によって金属部分の長さを選択する。

前足部の支持力に関与します。この記事では説明の都合上「ロングシャンク」と「ショートシャンク」として分けて説明しています。実際にはあぶみそのものにショートシャンク、ロングシャンクという区分があるわけではありません。足長や目的によって該当する部品を選択します。

ロングシャンク

装具内で足部が底屈するのを防ぐことを目的に選択します。

ショートシャンク

装具内で足部が底屈することを考慮しない場合や、軽量化したい場合、足長が短くロングシャンクに該当する部品が使えない場合に選択します。

追加仕様

各種ストラップ

T/Yストラップ

ストラップによる内反矯正の図

足関節の内反や外反を矯正するためのストラップです。

足背バンド

足抑えバンド。足関節底屈を制御したいときに導入する。

尖足を矯正するバンドで、足関節の底屈を抑えます。

靴底の加工

膝折れ防止目的や、接地面積、支持基底面を広げる際に加工を施します。

サッチヒール

サッチヒール。靴底の一部を加工。

靴底の踵部分を他の靴底よりも柔らかい素材に一部変更します。

立脚初期に踵が先に沈みこむ。その結果膝折れ対策になる。

通常の靴底よりも踵設置時に靴底が沈み込みます。結果、膝の軸にモーメントが近づくため、膝折れを防止しやすくなります。GSや底屈制動機能を持った足継手を使用する場合は使用しないことが多いです。(二重に底屈制動がかかってしまうイメージです)

フレアヒール

フレアヒール。イラストは外側にフレアヒールを足している図。

ヒールを横方向に延長し、足の接地面積を広げます。支持したい方向に靴底を延長します。

膝あて

膝あて。

膝関節コントロールのために使用されます。

膝折れ防止用

膝を前方から押し込み、膝を伸展位に保つために使用されます。

反張防止用

膝を後方から押し込み、反張膝がでてしまう場合に使用します。

内外反防止用

X脚やO脚の矯正に使用されます。膝関節に変形があり、支柱に触れてしまう場合に使用します。

まとめ

長下肢装具の基本仕様について、簡単に解説しました。今回はあくまでも、私が仕事で製作するよくある仕様をご紹介しただけに過ぎません。オーダーメイドで作る製品なので、星の数ほど仕様があり、普段触れる機会があるものしか説明できないのが実情です。

ですが、共通言語になり得そうなところは解説できたのかと勝手に想像しています。今回の記事が長下肢装具制作時の仕様決定に少しでも役に立って頂ければ幸いです。

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この記事には筆者の個人的な解釈も一部含まれています。一つの参考としてお読みいただきつつ、最終的にはご自身や担当の方としっかり相談の上で判断いただけますと幸いです。

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