はじめに
義肢・装具の費用に関する制度は複雑であり、いつ、どこへ、何の申請をすれば良いのかわかりにくいという声をよく耳にします。
実は義肢装具に関係する補装具費支給制度は複数存在しています。
例えば医師の処方のもと、治療を目的に健康保険を使用して装具を作る場合と、治療を終えた後、身体機能を補う目的で装具を作る場合では、適用される制度が異なります。
このように複数の制度があるため、セーフティネットとしての役割を強めていますが、同時に混乱を招く原因にもなっています。
この混乱が装具制作における障壁となっています。
そこで今回は、義肢装具とお金に関連する制度の基礎知識についてまとめました。
この記事の対象読者
- 看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャーなど、補装具費支給制度を利用者に説明する必要がある職業の方々
- 治療用装具を初めて作る人とその家族
- 更生用装具を初めて作る人とその家族
義肢装具の分類
- 治療用装具: 医師による処方が必要で、各種医療保険や労災、生活保護法での制作が認められています。
- 更生用装具: 治療終了後、症状が固定した後に、失われた身体機能を補う目的で制作されます。主に身体障害者総合支援法の制度を利用します。
補装具費支給制度の種類
補装具費支給に関する法律は複数存在します。代表的なものには労災法、健康保険(各種医療保険)、身体障害者総合支援法、生活保護法、児童福祉法、介護保険法(車椅子、ベッドなどのレンタル)があります。
補装具の支給方法
補装具費を受け取る方法は、償還払方式と代理受領方式の2つがあります。償還払方式では利用者が装具の費用を全額支払い、その後保険者に申請し費用の還付を受けます。代理受領方式では市町村が補装具の費用を義肢装具会社に直接支払い、利用者は自己負担金だけを支払います。
補装具費支給制度の優先順位
補装具費支給制度は、利用者が自由に選べるわけではなく、優先順位に影響されます。
労災保険又は自動車保険等、相手方が損害を補償する保険が最優先されます。
次に健康保険等、介護保険等、自分が加入している保険が優先されます。
労災、健康保険、介護保険が使用できない場合のみ、障害者総合支援法が使用可能になります。
補装具費支給制度のフローチャート
補装具費支給制度のフローチャートを使用することで、対象者がどの制度に該当するのか確認することができます。
ポイント
- 治療装具か否かが重要なポイント。治療用装具であれば労災法又は医療保険などの社会保険系の制度が優先されます。社会福祉系の制度は、原則治療用装具では使用されません。(生活保護法を除く)
- 装具と義肢は介護保険の対象。自動的に制度の選択肢から外れます。
まとめ
義肢装具には治療用と更生用があり、その選択には制度の優先順位が大きく関わります。また、装具を製作する際は、それが治療目的か、機能補完目的かによって申請する制度が異なります。
最後に重要なポイントを3つ。
- 治療用装具なのか、更生用装具なのかで使用する制度が変わる。
- 治療用装具は医療保険に申請。
- 更生用装具は障害者総合支援法。役所の障害福祉課に申請。
3つのポイントを知っているだけで、
複雑だと感じる義肢装具にまつわるお金の話が、理解しやすくなります。
今回の記事を読んで装具に関するハードルが1つでも下がることを期待します!
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